テレビは地震速報くらいしか見ない私ですが、テレビについて思うことを書きます。
この記事を執筆した2025/01/13に、日本テレビ系列で放送された全国高校サッカー選手権決勝の中継で、勝敗を決めるPK戦の途中でCMが入って番組終了したそうです。
SNSで上記について非難轟々だそうです。
視聴者からすればそうなりますよね、試合の一番重要なところを端折られたのですから。
今回の全国高校サッカー選手権に限らず、この手の話は昔からよくあることです。
スポーツ中継の白熱した場面でCMが入ったり、バラエティ番組やクイズ番組で「果たしてどうなるのか、続きはCMの後で」とCMを挟み、視聴者からすればなぜCMを挟むのか、と疑問に思うことは幾度もあるのです。
視聴者だけでなく番組制作者(番組を放映するテレビ局ではなく、番組というコンテンツを制作する会社)の側も、CMを頻繁に挟む番組なんてつくりたくないでしょう。
私はYouTubeなどに公開する動画をよくつくりますが、間にCMやアイキャッチを挟むような編集をするより、間に何も挟まずスムーズに進行する編集の方がつくるのが楽です。
間にCMを挟まなければ番組制作にかかるコストをもっと抑えられるのに、と苦々しく思っている制作会社もあるだろうなと思います。
でも番組を放映するテレビ局、それも様々な番組の間にCMが流れる無料放送の民放(民間放送)のテレビマンは価値観が異なります。
民放にとって、最重要コンテンツはCMです。
番組制作会社がつくった番組の間にCMをあてはめる編成をするのではなく、まずCMありきでCM放送枠を決めてからその隙間に番組を詰め込むのです。
視聴者側の見え方とは主従関係が逆なのです。
なぜ価値観が異なるかというと、民放のテレビ局はCMのスポンサー収入によって生計を立てているからです。
もっといえば民放のテレビ局はCMのスポンサーとはCM放映に関わる契約をしますが、私たち視聴者とは何の契約もしていません。
NHKは受信料、有料放送は会員料を納める契約を視聴者と個別に契約しますが、無料放送でCMが流れるテレビ局と視聴者の関係は、テレビを通じてテレビ局の流す番組を見てるだけで視聴者との契約は何もないのです。
テレビショッピングの番組で、番組で紹介された商品を視聴者が注文するときだって、テレビ局とではなく商品を販売する企業との契約で、テレビ局は契約に絡みません。
テレビ局がスポンサーと「この曜日のこの時間帯にCMを何本流します」と契約したら、それは絶対です。
お金が絡む契約なのですし、テレビ局はそのお金で食いつないでいるのですから、契約違反は絶対に避けなければなりません。
直接契約して食い扶持を与えてくれるスポンサーと、何も契約関係もなく勝手に番組を見てるだけの視聴者、テレビ局がどちらを向いて仕事をしているかは明らかです。
スポーツ中継にCMを挟むことで視聴者からいくらクレームが来ようとも、テレビ局は知ったこっちゃないのです。
視聴者との契約は何もないのだから、痛くも痒くもありません。
嫌なら見なきゃいいじゃん、と視聴者に対して強気に出ることだってできてしまいます、契約関係ではないのだから。
各テレビ局が番組ごとや時間帯ごとに算出している視聴率という数値があります。
ニュース記事などでこの視聴率に触れて「このドラマは視聴率が高いから次回も見なきゃ」とか思う視聴者もいるでしょう。
でもこの視聴率だって視聴者に向けて出しているものではなく、スポンサーに向けて出しているものです。
テレビ局がスポンサーに契約を持ちかけるときに視聴率を示しながら「人気のある時間帯にCM流せば高い宣伝効果が望めますよ」と提案するのです。
民放のテレビ局の行動は全てスポンサーのためなのです。
民放のテレビ局に勤めるテレビマンからすれば、制作会社は「制作費を出すからCM放送枠の隙間時間を埋めて視聴者を誘引する番組をつくれ」と指示する下請けです。
番組の出演者がCMを流している間にトイレを済ませるよう視聴者に言ったりしたら、テレビ局の存続に関わる一大事です。
テレビ局は「CMと番組の上下関係を間違えるな、わきまえろ」と怒り、出演者を干し、スポンサーにお詫び行脚することになるでしょうね。
民放のテレビ局の本音は24時間365日、スポンサーのCMを流し続けたいのだと思います。
でもそれでは誰も見なくなって宣伝効果が得られないので、視聴者を誘引するために制作会社に番組をつくらせているという構図です。
そもそも民放のビジネスモデルがいびつなのです。
視聴者が視聴に必要な料金を支払うことなく、テレビを用意して放送電波を受信できればどこからでも誰でも視聴できるようにする。
そのためにテレビ局でかかる費用はスポンサーから得る。
テレビ局はスポンサーから得た対価の収入としてCMを流したり、番組でスポンサーの商品を取り扱ったりする。
民放のテレビ局に言わせれば、視聴者に向けて「ただで見せてやっから、CMやスポンサー商品が露骨に出てきても文句言うなよな」といったところでしょう。
まあでもこのビジネスモデルの話は、ブログでGoogle AdSenseで収入得てる構図と同じじゃん、と突っ込まれかねないので耳が痛いところです。
民放のやり方がいびつだと言っといてブログで小遣い稼ぎはいいのかよ、やってること同じだろ、と言われたらその通りでして。
ともかく、スポーツ中継のようなリアルタイム性を重視するコンテンツは、CMが最重要な民放には向かないのです。
スポーツ中継の放映権は無料放送の民放は入札に参加せず、CMが流れないNHKか有料放送でのみ放映する方が社会への貢献度は大きいと思います。
無料放送の民放は後からハイライトや試合結果だけ流すでもいいのでは。
そして民放のテレビ局にとって重要なのは視聴者ではなくスポンサーなので、もし番組を見ていて不満がある場合はテレビ局へのクレームよりも、その時間帯にCMを流した企業へのネガティブキャンペーン(不買運動とか)の方が効果が大きいと思います。
テレビ局が関わるお金の流れを俯瞰して、ここで流れを止めればテレビ局にお金が入ってこなくなるな、と見極める感じで。
もっとも最近はテレビCMよりネット広告に積極的に出資するスポンサー企業も多いようですし、21世紀のうちにスポンサー依存の民放のビジネスモデルは維持できなくなるのでは、とも思います。
かく言う私はテレビは地震速報くらいしか見ないので。
ある程度生きてくると、最新情報をリアルタイムで取得しないと生きていけないようなことは世の中にはそれほど多くないのだと気づくのです。